289人が本棚に入れています
本棚に追加
/354ページ
だが。
こんな美女に買われちゃうなんて、なんか、異世界の奴隷生活も悪くないのかも、とか一瞬でも思った俺は、本当に愚かだった。
俺は、騙されていた。
俺が連れていかれたのは、男娼の館『黒薔薇館』だった。
何?
男娼館って。
店の前で立ち尽くす俺を見て、その美女は微笑んだ。
「さあ、いらっしゃいな。店の子達に紹介するから」
俺は、店の2階の部屋持ちの連中のところへ連れていかれた。そこには、俺の半分ぐらいの年齢のガキどもがいた。
まず、樹理とかいう女主人は、俺をカイとかいうくそ生意気なガキのところへ連れていった。
「カイ、うちのNo.1のカイ・ローリングよ。カイ、この子は・・えっと、あなた、名前は、なんか、あるのかしら?」
「雨夜、です」
俺が答えると、この女主人は、にっこり笑って、カイに言った。
「アマヤだそうよ。あなたの従者として買ってきたんだから、可愛がってあげてね」
「従者?」
カイというその可愛いげの欠片もないガキは、さらさらのハチミツ色の髪をかきあげながら、俺に近づいてくると、俺の顔を覗き込んできた。
丸い、ビー玉みたいな瞳。
そして、ガキは、言い放った。
「こんな、がらの悪そうなおっさん、いらないよ、樹理」
最初のコメントを投稿しよう!