幻日 -Every Evening-

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 昼と夜の間の時間が特殊だな――。  午後の授業中、さっきの昼休みのときに高良の言った言葉が、俺の頭の中を何度もよぎった。  違うな。特殊なんかじゃなかった。  俺は、昼と夜の間にある夕方ってのが怖かった。そんな時間帯は長く過ごしたくないから、できればすっ飛ばしたいから、そんな時間帯はないのだと自分に言い聞かせるように、俺は夕方になる前に、1日を終わらせようと生き急いでいた。  なぜ怖い?――と誰もが思うだろう。  なぜなら、俺はある事実に気づいてしまったからだ。夕方という時間になると、周りにいるクラスメイトたちが、道ですれ違う人たちが、目に見えるすべての人たちが、今朝とは違う別人の顔になっていて、異世界に――いや、たぶん、“こちら側の世界”にそっくりの“あちら側の世界”に向かい出すってことに。  そして実際に、一部の奴らは“あちら側の世界”へ足を踏み入れてしまう。  それで翌朝になって、布団の中で“昨日と同じ人間”として“こちら側の世界”で目覚めるのだろうか――戻って来られるのだろうか。  ああ、こいつはちゃんと戻って来たと思えるのなら、それでいい。昨晩は異世界にちょっと冒険に行っていたって程度のことだ。でも、翌朝、昨日とは別人のようになって、目の前に現れて来たら?  俺だってどうだ? 大丈夫のはずだ。いつも息子には無礼なクソ親の態度を毎朝見れば、俺も家族も一度も何も変わっちゃいないとわかる。  だが……“きちんと戻って来られず”に“別人のようになってしまったヤツ”を俺は知っていた。
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