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「うちは迷惑なんて。英も喜んでるし」
「ねー、いいでしょー!元はと言えばパパが風邪引いたのが悪いんだし」
「こら!峰希!」
パーフェクト人間も娘には弱いらしい
「峰ちゃんって峰希って言うんだよね」
「そうなの。南出峰だとゴロが悪いからって父さんがつけたんだって。わたし、着替えとってきます!」
峰希が隣の自室に行ってしまうと、途端に気まずい空気が流れた
南出は北野をなめ回すように見ると
「峰希に変なことしないでしょうね?」
「はい?!」
「世の中には普通に見えて犯罪を犯す人がたくさんいますから。顔見知りの大人の男なんて一番疑いますよ」
「バカ言うな!あんな小さい子に興味なんか持つか!アホ!」
「わからないじゃないですか!」
あまりの言いように北野は腸が煮えくり返るような気がした
「お前な!」と怒鳴ろうとしたとき
「でも、北野さんがそんなことする人じゃないのは知ってますから」
南出が急にしおらしく呟いた
「峰希をよろしくお願いします」
頭を下げられて、調子が狂った
「お、おう」
まぬけにも、そう答えるしかなかった
※※※※※※※※※
英と峰希が寝た後ひと仕事し、北野はやっと湯船につかることができた
(俺は穏やかな人間なはずだ。理科子もそう言ってたし。夫婦喧嘩だってしたことなかったぞ。あー、腹が立つ)
南出の言葉を思い出し、イライラが募る
(今日はさすがに疲れたな)
風呂のなかでうたたねしかけてあわてて湯船を出る
以前、朝まで寝てしまって、指がしわくちゃになったことがある
英の部屋の前を通りかかると、ドアの隙間から、遊び疲れて熟睡している二人のシルエットが見えた
(俺も寝るかな)
北野の部屋の窓から南出の寝室が見えた
(あの部屋だったよな)
道路に面した2階の右の部屋。自分の部屋と同じ場所だ
(ムカつくけど峰ちゃんがかわいそうだしな。しっかり寝て早くよくなれよー)
北野は心の中で念を送って眠りについた
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