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これ以上踏み込んで【いおり】の存在が明確になるのが怖かった
元妻なんだろう、とは思う
よくあることだし、当たり前のことのはずなのに
別れ方は違っても、北野にだって理科子がいるのだ
なんでこんなに気になるのか、自分でも不思議だった
「それでお礼と言ってはなんですが、来週末に峰希の誕生日会をやるので、ぜひいらしてくださいませんか」
英が目を輝かせた
「峰ちゃん、いいの?」
「もちろんだよ!」
英と峰希がうなずきあった
「いや、さすがにそれは…そんな大事な記念日にうかがえませんよ」
「えー?!」
英が頬を膨らませた
「おじさん、いいでしょ?!」
峰にすがられると北野も弱い
「いやだって、峰ちゃんのお母さんとか…」
言いかけてやめた
(最後のとこは聞こえてないよな)
ちらりと南出の表情を伺う
聞こえてて、スルーしたか?
しかし顔色ひとつ変えない
(鉄面皮め)
心のなかで毒づく
大方峰希に押しきられて嫌々誘ってるんだろう
北野の視線に気づいたのか、南出が顔を上げた
一瞬目が合った気がしたが、すぐに反らされた
気がづくと、南出の頬が耳まで赤くなっていた
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