弱り目に祟り目

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「パパー」 峰希が階段を駆け上がっていく 後に続いていいものか迷うが、「お邪魔します」と呟いてゆっくり階段をのぼった 階段の途中の小窓脇にはおしゃれな瓶や小物が置かれていた 吹き抜けの天井のライトも、北野の家の備え付けのものとは大違いで、木製のファンが回っていた (昼間は気づかなかったけど、よく片付いてるよな) 階段の隅にほこりひとつ落ちていない (お手伝いさんが来てるのかもな) 北野はあまりのまぶしさに、根拠のないことを決めつけるしかなかった (うちはローンを払っていくので精一杯っと) ため息が出てしまう 共同でローンを組んでいたため、理科子が死んで、ローンは半分になった (嬉しいやら悲しいやら) 悲しいに決まってる 家のローンか重荷になったとしても、理科子がいれば、重荷だって苦にならなかったのに 峰希は昼間、北野が南出を運んだ部屋の前で立ち止まった 「パパ、英くんのお父さんが来てくれたよ。今日は英くんちに泊まっていいんだって」 部屋には入らず、廊下から声をかけた 近寄るな、ときつく言われているのだろう 北野もそれに倣う 「こんばんは。調子はどう?」 「は?!え?!峰希、何言って…え?!」 大の大人がたじろぐ姿を初めて見たかもしれない 「何ですか急に!」 「峰希に付いてきてくれたの」 「お父さんが風邪で不安だろうから今日はうちに泊まれば?って言ったんだよ」 「そんな…ご迷惑になりますので」 口調がいつもの調子に戻った 一瞬だったな 北野は残念に思った  パーフェクト人間の慌てる姿が見れただけラッキーだったな
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