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「ふたつに見えるって、どういうこと?」
最近、由紀が落ち込み気味なのには司も気がついていたが、なにぶん司も仕事が忙しい。
気遣って声をかけるくらいはするが、具体的に何かをすることはなかった。
「ふたつっていうか、二人に見える」
ふたつ、ではなく二人。
「光源が二つあると、影が二つになるっていうよ」
由紀のことばの意味を理解しきれずに理屈で返し、ビールを開け切った。
「そういう感じじゃないの。家で遊んでいるときとか、公園で走り回ってるときとか、衿人のそばにもうひとり同じくらいの子がいるみたいに影が見えるの。前は時々だった。でも最近はしょっちゅう」
司の背中に、さあっと冷たいものが流れた。
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