変な人一話

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変な人一話

 鳥取の高校を卒業して、晴れて京都の大学に進学した。二階建てのアパートに住み、2ヶ月がたったけど、変な人がいる。  「おはよう」  笑顔で挨拶するその人はほうきで廊下を掃いていた。大家さんはおばあさんだったし、その孫か息子かだと思っていた。歳は見た目30歳ぐらいだろうか。  「大学?一限目から出るの?真面目だねえ」  そう言われて「大家さんの息子さんですか?」と訊くと首を傾げて「このアパートの住人だけど」と笑った。  「住人なのに掃除してるんですか?」  「暇だからねえ」  「今日仕事休みなんですか?」  「ずっと休みだよねえ」  「はあ」  わけがわからないまま一限目を受け、講義は昼で終わってアパートに帰るとあの人がふんぞりかえって眺めていた。  アパートのすぐ隣に一軒家が作られていてそれを眺めているらしい。  「いいねえ」  そう独り言を呟きながら腰に手を当てて眺めている。  私は部屋に戻って昼食の準備を始めた。  夕方になって、夕飯の食材を買うため家を出る。扉を開けた瞬間、あの人の姿が目に映った。  「あの、何をしてるんですか?」  「家が建つのを見てるんだよ」  「いつから見てるんですか?」  「そうだねえ、朝の10時ぐらいから見てるかな」  「あなたの家なんですか?」  「知らない人の家だね」  そう言って笑うこの人を見て意味がわからないまま、スーパーに向かった。
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