1 はじまり

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 どうやら、お姫様はその狩りの最中に抜け出してきたようです。王様とケンカでもしたのでしょうか。 「お父様が私を心配? そんなことあるわけないわ。絶対に!」  と、ますます怒ったように叫ぶお姫様。走るスピードがまたぐんと上がります。召使の少女も、ますます青い顔に。  と、そのとき――、 「あ、見て、あれを!」  お姫様が何か見つけたようです。急に足を止め、空を見上げます。  その見ている先にあるのは、金色のうろこの――竜。  そう、なんと大きな竜が空を飛んでいたのです。 「ああ、なんておそろしい!」  召使の少女はその竜の飛ぶ姿に、たちまち震え上がりました。 「姫様、私は聞いたことがございます。この森の奥には人を食べるおそろしい竜がいると。きっと、あれでございますよ」 「人を食べる竜? あれが?」  その話にぎょっとしてもう一度空を見上げるお姫様。やはりそこには竜の姿があります。人を食べるというだけに、とても鋭い牙と爪をもっているようです。ああ、おそろしい。
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