偽りの感情

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「私が……私が付き合っていた隆人君は……」 そこまで言って涙腺を決壊させた。もう止まらなかった。自分を悲劇のヒロインに作り上げるための作りものの涙。私の中での勝負涙である。すべてを吐き出して乃亜さんに許してもらい楽になりたい、これまで秘密にしていたことを全て吐き出し心を軽くしたい。そのために私はなりふり構わず泣いた。 過去経験の無いくらい全力で流した作り涙のせいで次の言葉は出てこない。嗚咽のせいでまともに酸素が吸えず、必死に酸素を探る。部屋ごと酸素が薄くなったのかと錯覚するくらい苦しい。取り乱してまともに呼吸もできずここが現実なのか夢なのかわからなくなってきた。自分でもここまで上手に泣けるとは思わなかった。 無我夢中で偽りの涙を流し続けていると気づけば私は温かなものに包まれてた。 「いいの、話したくないなら、無理に話さなくていいから。」 気づけば乃亜さんの胸の中にいた。乃亜さんの綺麗な部屋着が私の涙で濡れている。 私はとにかく心を落ちつかせた。優しい乃亜さんはきっと私に無理に言いたくないことを言わないように気遣ってくれているんだろうけどこれは伝えないときっとずっと後悔する。こんだけ上手く泣けたのだ、このチャンスを逃したらダメだ。呼吸を整えて一文字ずつ落ち着いて…… 「りゅ・う・と・さ・ん・は……」 「いいのよ!言いたくないことは無理に言わないほうがいいわよ。」 違うの、私は言いたいの。全てを打ち明けて罪から逃げたいの。ねえ、乃亜さん! 無言のまま私は上目遣いで乃亜さんの方を見た。ゆっくり首を振って最後まで話を聞いてもらおうとした……泣きながら罪を打ち明ける後輩とそれを優しく包み込む先輩。完璧な舞台は整った。
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