1話目

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 車のライトが次々に、僕の背中を照らしては通り過ぎていく。  僕と朱里は、川面を見つめて黙っていた。  曇りの日って意外と明るいから、困ってしまう。満天の星空の下は、星明りがあるけど、星さえ遮れば、闇。  この川を辿っていけば、すぐ近くに海がある。海も空も、すぐに自由っていうイメージに結び付けられがちだけど、実際その中に放り込まれたら、過酷だろうと思う。僕はできれば、魚にも鳥にもなりたくない。もし輪廻転生があるなら、できればもう一回人間になりたい。その時に人間が滅びてなければ。 「庸介」  朱里が僕の名前を呼んだ。でも、こっちを向いてないことはわかる。だって、音が遠回りしてきたから。 「あのね、庸介。私は今日が、曇りで良かったと思うよ」 「なんで」 「だって、死ぬつもりだったんでしょ、星を見たあと」
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