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僕たちは、ビルの中のプラネタリウムに向かっていた。
12月。ふたご座流星群の極大期に入っている。本当なら電車に乗って、さびれた駅で降りて、そこからバスに乗って、更に歩いて。
天体観測のできる、高原に行く予定だった。
悲しいかな、地上に住む僕たちと星の間には、雲のいたずらが入ってしまうのだ。せっかく今日って決めたのに、と何度目かのため息を吐いたところで、朱里が僕の手を握ってきた。
「天気なんか、気にしない気にしない」
そういって笑う。ホントお気楽。
でも、そんな朱里に何度も救われてきた。そんなこと、朱里は知らないんだろうな。そして、これからも知ることはないんだろうな。
透かして見ることのできない雲の向こう側では、いくつもの流星が流れている。音もなく、流れては消えていく星は、今向かっているプラネタリウムの星より本物に近いって、なんだか皮肉っぽい。
なんで本物に近いと消えるんだろう。なんでまがい物は輪郭が強いんだろう。思わず眉間にしわが寄った。そうしたら、朱里が僕のコートの端を引っ張った。
「庸介、顔が暗い。せっかくのデートなのに、楽しもうよ」
ああ、神様。今日が曇りなのは、何故なんですか。
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