サンタクロースのころ

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その年のクリスマスイブ。雪の日だった。 隣の施設の前に不用品を入れる箱が出ていた。箱の中には、駄菓子やら、少し汚れたぬいぐるみやらが入っている。近所の住民に話を聞くと、「ああ、毎年クリスマスにね、施設の子供たちにあげるものを集めてるのよ。みんな親がいない子たちでしょ。なんだかかわいそうだから、いつもウチの子のいらなくなったおもちゃとか、そういうのあげるようにしてるわ」とのことだった。 ふと思い立って、駅前の楽器屋に行って、子供でも演奏しやすい電子ピアノを買った。 「配送しますか?」と聞かれたが、断って雪の中を自分で運んだ。 例の箱には当然入りきらないので、施設の玄関に立てかけておいた。 他の子がもらうと困るので、包装紙に「いつも素敵なピアノを聞かせてくれるあなたへ」と書いておいた。 なんだか本当のサンタクロースになったような気がした。
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