第三話 6月の君へ

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第三話 6月の君へ

私は、雨が嫌いだ。 気分が暗くなるから。それに、雨だと電車が遅れたりする。良いことがない。 でも、休みの日の雨は好き。部屋の窓に打ち付ける雨を見ながら、読書をするのが好きだから。 今日は休み。だから、雨が降っていても全然良かった。 はずなのに。 「はあ。外出たくないなあ」 今日は月に1度の通院の日。私は昔から偏頭痛持ちで、定期的に病院へ通っている。 とはいっても、最近はだいぶ落ち着いていて、通院の時はいつもの薬をもらって帰るだけ。 それなのに、こんな雨の中外に出なければならないなんて。さすが厄年。 私は、これ以上家にいたらマズイと判断し、ベットから無理矢理体を起こした。どうせマスクするし、メイクは最低限でいいよね。 と、誰にでもなく言い訳をしながら、ぱぱっと身支度を整えた。 せめてもの抵抗と言わんばかりに買ったお気に入りの傘を持って、玄関の扉を開けた。 外はさっきより強い雨が降っている。 ああ、ベット帰ろうかな。ダメか。ちぇ。 頬をぺちんと叩き、気合いを入れる。 よし、帰りにコンビニでプリン買って帰ろう。
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