第三話 6月の君へ

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「……?」 病院についた私は、奇妙な光景を目の当たりにした。 病院の正面玄関のところに、木製のベンチが置いてある。そこに、一人の青年が座っていた。 こんな雨が降っている中、器用に傘を差し、左手ひとつで小説のページをめくっている。 なんで、こんな日に外で読書を? 「……あ」 目が合った。青年は少し驚いたような顔をしていたが、すぐに小説に目を戻す。 ……綺麗な人だな。顔も整っているけど、佇まいというか雰囲気というか、とても落ち着いていて品のある人って感じ。 見た目は高校生くらいだけど、もしかしたら私より年上なのかな。 って、いつまでもジロジロ見てたら失礼だよね。さっさと診察を済ませて、プリン買って帰ろう。 私はその青年を横目に見ながら、病院の入り口を通った。
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