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訣別(寄宿舎もの)
洋もの? 寄宿舎もの ジュネ風 お料理ものなのか?
たまには真面目路線の心情系を
悲恋ではなく、後には再会ものになると思いたい!
(途中経過にパトロンの登場といったドロドロとした展開がありそうだけど(笑))
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親愛なるヨハン
突然ですが、僕は調理学校を去ることにしました。
僕はこれから自分の小さい世界を広げるために、旅に出ようと思います。
君も知らない、遠い、遠い、遥かな地へと。
僕がいくら頑張ろうと、君は憎らしいほどの確固としたストレートで、他を寄せ付けない風土料理センスを持っていたね。
僕ではとても敵わなかった……。
それに君をただ好きだというだけで、とやかく絡み迫って悪かったと思うよ。
僕もなりふりなんて構っていられなかったんだ。
哀しいことに、これっぽっちも脈がないのが分かっていたのにね。
だけど、本当のことをいえば、これまでのことは全く反省していないんだ。
僕にとっては、これが一度きりの人生だから。
それもここまで。僕の背中には小さいながらにも二枚の羽根が生えた。
この小さな翼でひとっ飛び。……そうはいかなくても、もがき羽ばたいていこうと思うよ。
広い世界のどこかには、僕のことを受け入れ愛してくれる人がいるはずだから。
羽ばたくのは怖くない。元より辛苦は承知さ。
それに、ヨハン。僕はスパイスの勉強がしたいんだ。
そんな僕に調理学校は小さ過ぎる。
ターメリックにナツメグ、タイム、ローズマリー。カレーリーフにレモングラス。外の世界だったら、生スパイスだって手に入る。
僕の前には無限に未知の絨毯が広がっているのさ。
ちっとも心残りはないよ。寄宿舎なんてクソ喰らえだ。
だけど、もし少しでも僕のことを気にかけてくれるというなら、その想いを遥か遠い国まで馳せて欲しい。
僕はそれを糧にいつか大輪のスパイスの花を咲かせるよ。
必ず、必ず。約束する。
愛していたよ、ヨハン。
さようなら。
くれぐれも体に気をつけて。
心を込めてシモンより
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