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ご褒美(PC付喪神+趣味物書き)
人外(PCの付喪神)+趣味の官能小説物書き
過激表現あり ご注意ください
自分で設定したお題:OSのアップデート,塾,甘くない(一方通行)
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キーボードをカタカタと打つ青年の指の動きが止まる。青白く痩せた指先が、このPCの付喪神である我が身から離れていった。
我は殊の外、この青年の指のタッチが好きだ。離れていったのは残念だ。残念だけれども……。
先ほども言ったが、我はこの古いPCに憑いている付喪神だ。名前はまだない。もし必要とあらば、便宜上"ツクモ"と呼んでくれ。
付喪神というと、とても長い間永らえている神に思えるが、我のように短い寿命のモノについた付喪神は寿命も短い。
割りと古いPCといっても他の付喪神と比べたらピチピチの若さだし、このままあっという間に与えられた生命を全うしてしまうに違いない。
こんな風に語ると、憐れみを持たれるかもしれない。
だが、この世に永く居続ける、○✕貝塚遺跡から出土した縄文土器に憑いている"ドッキー"よりも断然マシだ。
ドッキーは出会いと別れを繰り返し、いつ消滅できるかも分からない悠久の刻の狭間で暇を持て余している。
ドッキーに言わせると、ヒューマンドラマを立て続けにタダで観ているようなものだそうだが、そんな良いものには思えない。
この世に一人寂しく取り残されるなんて、まっぴら御免だ! 寂しさのあまり枕に涙し、枕カバーの替えがごまんと要るに違いない。
とはいえ、正直、我もあとどれくらい、このPCに取り憑いていられるのか分からない。
数ヶ月前の大規模なOSアップデートは厳しかった。古くなったCPの処理能力は遅く、八時間半もかかった。PCが正常起動した時には我が身の無事も同時に喜んだものだ。
密かに画面の前で胸を撫で下ろす青年にハイタッチをしたことは、我の記念すべき良き思い出だ。
本当にアップデートなんて、危ない、危ない、危ないよ~~。
以後は、どうかお手柔らかに。
そんな愛しい青年が今、我の前に張り付いて趣味の小説を書いている。
普段は塾で国語と社会の講師をしているそうなのだが、執筆活動は全くの趣味で、本業の陰に隠れて内から沸き起こった欲求のまま必死に筆を走らせている。”没我”と呼ぶのに相応しい熱中ぶりだ。
それもそのはず。ジャンルはなんと官能小説で、数年に渡ってWeb上に作品を投稿し続けている。
けれども、青年もそんなイケナイ趣味を持っていることを重々と自覚しているのだろう。日常を綴るSNSも含め、塾生たちに不用意に特定されないよう、塾では仮名を使っている。
とはいえ、塾講師業界では普通のことなのか、青年以外の同僚たちも仮名を使っている者が多いようだ。
そんなわけで青年は仕事で使用する資料に予測変換されたいかがわしい語句がうっかり並んでしまわないよう、趣味と仕事とでPCを使い分けている。古い我は専ら趣味用だ。
今し青年が筆を置いた。だが、別に展開に行き詰まったわけではない。
青年は執筆しながら作中人物に入り込むことで、自らも興奮し頬を赤々と上気させていた。それもいつものことだった。
青年は荒い息を吐くと、下腹部に集まってきた熱を散らそうと腰を左右に揺さぶる。そんなことくらいでは引いていかない情動の波に、更に興奮を募らせる。
「女王様、どうかその革靴の底で僕のピーーを踏み潰してください」
前かがみになりながらも、キーボードをカタカタと手早く打つ。
湿った青年の指はいつもより温かだ。
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