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「集合」
「はい」
「道場に戻って一年は的立て、二年三年は素引きや巻藁、立ちの準備をして」
「はい」
部長らしき先輩の凛とした声が響く。
入るつもりもないのに、弓道部と分かり、急にこの場を立ち去るのが名残惜しくなった。
ここにじっと立っていては不自然だと思いつつも、歩を進めるどころか部員たちの動きを目で追い、たわいもない会話に耳を向ける。
「そういやゴールデンウィークに海皇館と練習試合をするって本当? あそこはうちなんかとは縁のない強豪校だよな?」
駿が進学した学校だ。
すまし耳どころか、ダンボになる。
「そうそう、あの海皇館。なんでも外部から指導に来ている先生の孫というのが、うちの高校に入ったんだって」
紛れもなく僕のおじいちゃんのことだった。
「へえ〜〜、それで試合。だけど、孫? その孫は弓道はしてないのか?」
「分からないけど、してないんじゃないか? していたらさ、うちの高校には来ないでしょ?」
「だけど、学力とか経済的な理由とか、大学受験を見越してとか、うちの高校を選ぶ理由だっていろいろあるじゃん」
「まぁ、そうだけどさ。仮にうちででも弓道をするつもりがあるんだったら、既に来てくれているんじゃないのか? だけど、新入生の入部募集期間は終わってるし、今いないってことは……」
「だよなぁ〜〜」
「多分、見学にすら来てないよ」
「期待薄だな」
ふいに自分のことが話題に上がり、居た堪れない気分になる。
「だけど、まぁ、そんな孫が来ても、うちには掃き溜めに鶴かな」
「そうそう。却って申し訳なくなるよ」
「だよな。だけど、その孫が入ったら、俺の射を見てもらえるかななんて、ちょっと思った」
「それな。うちの場合、経験者の松田ちゃんが顧問になってくれているけど、もうちょっと教えられる人が欲しいよな。後輩たちは俺らが見るといっても、正直、俺たちだって見てもらいたいよな」
うちの裏山の道場へ場外練習に来てくれれば、いつでもじいちゃんが相手をしてくれると、気軽に言えるほど残心の家までの交通の便は良くない。
けれども、思いのほか孫への期待が試合の成績でなく、経験者としての存在価値を所望されていることに驚いた。
弓道部か……。
ゴールデンウィークには、そのおじいちゃんと駿も桜台にやってくる。
つづ…………かない
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そりゃ、地域の世話焼きに引っ張って行かれるか、こっそり試合の様子を覗きに行くでしょう! 是非とも合同合宿もして欲しい。
というスポコンあるある、希望的観測の設定にしてみました。
BLの雰囲気はニアくらいしかないですけど。
これをちゃんと書くとしたら、
学生弓道⇒仲間意識や友情、思いやりと高め合う心
BL⇒お互いを知るところ
などを考えながら綴りたいですね。
ということで、スポーツ企画にのっかって、物語のはじまりの美味しいところだけを書いてみました。
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