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西のテーマパークに、ようこそ!(チャラ×強面)
チャラ男(軽石脳ミソ)×三白眼の強面 同僚 デキCP
旅行 テーマパーク 山なし落ちなし意味なし
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福士の目の前に各種旅行会社のパック旅行のパンフレットがバサッと置かれた。
それらを意気揚々と駅に並ぶ旅行会社で集めてきた昴こと"チャラ"が、ニコニコと満面の笑みを浮かべてこちらを眺めている。
(お前なぁ……)
昴はルームシェアをしているわけでもないのに、毎晩押しかけてくる図々しいヤツなのだが、単なる会社の同僚でも気の置けない友達でもない。
最初こそ居残り残業の悪ふざけでうっかりと体の関係を持ってしまったにせよ、今では福士の列記とした彼氏だ。
とはいえ、そのチャラい外見通り、頭の中も軽石ばりに軽い。
「おい、昴、これは何のつもりだよ」
「見たまんまだろ? 旅行のパンフレットで、もちろん行くのはお前と俺!」
「はぁ、そうなんだろうな。で、何でわざわざ大阪まで行くんだ?」
「そこそこそこ! 福士く~んも俺と泊まりがけで、ちょっ――と足を伸ばして大阪あたりに行きたいかなと思って」
確かにパンフレットには道頓堀にアメ村、海遊館に大阪城、極めつけは西のテーマパークがウェルカムと存在感を示している。
「何が泊まりがけでだ。大体お前とはほぼほぼ半同棲状態だろーが。今更……」
「そんなツンなこと言って、福士の顔には『昴さま、是非とも西のテーマパークへも連れて行ってください。年明け早々に行ったネズミランドのリベンジをしたいです。今度こそ羽目を外して昴くんとイチャコラしたいです』って書いてあるぜ」
福士と昴は年明け早々、鼠年にかこつけて……。いや、昴におだてられて東のテーマパークへと出かけた。
だが、男同士というだけでも悪目立ちするというのに、福士は生まれもっての三白眼。普通にしていてもガンをつけていると勘違いされてしまう凄みある強面だ。単品でも場違い感が半端ない。
しかも、悪ノリした昴にお揃いでネズミ耳のカチューシャをつけられ、氷の〇王のごとく周囲を氷点下まで凍りつかせてしまったのだ。
「嫌だ、明らかにあの時の二の舞になるパターンだろ? 今度は魔法の杖で凍らせろつーのか」
「福士く~ん、それはすげぇ才能! 直ぐにでも魔法学校に入学できるんじゃね?」
「止めてくれ。俺はそんな胡散臭い職業よりも地に手足がついたリアリストが似合ってんだ。一生臭い安全靴とお友達で良いっつ――の!」
化学メーカー勤務の福士たちは普段の内勤ではスーツを着込んでいるが、隣県にある工場に出向く際は会社から貸与された作業服と安全靴を身につける。
「俺がお前の安全靴になってやるから、安心して靴も俺に乗り換えろ!」
要望に応えてゲシゲシと踏み付けてやったら、昴の妙なスウィッチを入れてしまったみたいで、足首を掴まれてひっくり返された挙句、足の指の間をペロペロと舐められ悶絶する。
お前は犬かっ!
こうなるといつもの如くなし崩しになって、昴を咥え込んで低い声で啼かされる羽目になるのも時間の問題だった。
◇◇◇
そんなこったで有耶無耶のうちに昴に言いくるめられ、十一月の寒空の下、はるばる大阪にある西のテーマパークに来ていた。
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