残心(弓道もの・強豪校有力選手×地味キャのサラブレッド)

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残心(弓道もの・強豪校有力選手×地味キャのサラブレッド)

強豪校有力選手×地味キャのサラブレッド スポコン、弓道もの、DK、アオハル、ライバル、幼馴染もの、同級生もの、王道 SSにもなっていない起の練習文 ************** コミュ"BLシェアハウス"の2021スポーツ企画にからめて BLシェアハウス: https://estar.jp/user_groups/7514 一般参加窓口: https://estar.jp/bbs_topics/32446828 専用ブック: https://estar.jp/novels/25864755 ************** ~プロローグ~  (まげ)わっぱのように綺麗な弧を描いた木枠。そこに新聞紙を二枚、的紙(まとがみ)を一枚、うっかりと紙を破ってしまわないように慎重に力加減を考えて、紙の表面に添えた掌を滑らせてゴミや気泡を抜きながら一枚一枚張り重ねていく。  これも器用さが求められる職人技。的張(まとは)りには矢で的を射る時とは別の、紙を破ってはならないという緊張感や、紙がピンと張るのと同時に心も張り詰めていくような高揚感があった。 「残心(ざんしん)、明日使う的、じいちゃんにどっちの張った的を選んでもらえるか、勝負しようよ!」  隣で一緒に的張りをしていた駿(しゅん)が、糊がべっとりとついたハケを片手に満面の笑みで振り向く。  やや色素の薄いサラサラ髪、はっと目を惹くくっきり二重の双眸(そうぼう)。口を開かないとツンケンとしているように見える美人ママの容姿に、駿はよく似ていた。子供ながらに華やかな整った顔をしていると思う。  残心はそんな駿にうっかりと見惚れてしまわないよう、的を張る手元に視線を落とし、作業に集中する。 「どんな勝負? 負けたら罰ゲームとか、僕は嫌だからね」 「たまには良いじゃん。俺が勝ったら、残心に誓って欲しいことが一つあるんだ」 「誓う? お願いを聞くの間違いだろ?」 「いや、願いじゃない、誓いだよ。だから、一世一代を掛けた勝負。この的張りで良いよね?」 「的張りで一世一代? 相変わらず、駿は大げさだな。だけど、その願いというのが、…………すごく怖い」 「怖くない、怖くない。俺、大真面目だし。だから、残心、的張り一本勝負だよ!」 「それ、やっぱり嫌だな~~」  駿は、至極真剣な面持ちで言い切った。  それでも残心には負けず嫌いの自覚がある。一旦、勝負となると、いつも以上に気合が入った。  そもそも的張りはこんな拘りのある張り方をしなくとも、黒丸や三重丸が描かれた簡易シールを適当に張る方法もある。  けれども、あのシールを張ると後が剥がしにくいし、矢で射た時にも鈍くてちょっと残念な音がする。練習用なら、それでも構わないと思うが、職人気質のおじいちゃんは的張り一つにも拘りがあった。  特に明日は半期に一回の百射会の日。会の始まりに行う矢渡しでは、師範代のおじいちゃんがデモンストレーションで矢を射る。その時の的には、その日一番の張りの良いものを使う。  しっかりと張りのある的は、矢が刺さった時にパンと高く澄んだ音が鳴る。静寂の中に響くあの音には、幼心の残心でも憧憬と神秘の念を抱いた。  けれども、その射会で使われた的は残心が張ったものだった。駿はいつにもなく悔しがり、じんわりと涙を滲ませた。よほどこの勝負にかける思いが強かったのに違いない。  その押し黙った駿の表情がいつまでも残心の記憶に残った。 ――駿は一体、僕になにを誓わせようとしていたのか。    ***
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