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ムトーの自宅に到着すると、わたしはさっそく彼に涙の症状を説明した。
「なるほど、ね。なあユリ、最近涙がでたのはいつだい?」
ムトーがわたしにたずねた。
「タイムマシン計画の説明会へ出席していた時よ。わたしの視界に人が入ると、涙が出てきてしまうことがあったの。すべての人で同じ症状が出るわけでなく、視界に人が入ったとしても、涙が出るか出ないかは、人によるのだけれど」
「なるほど……ね。知ってのとおり、きみの体の構造はわれわれ人類にはほとんどわかっていない。きみ以外に、きみの種族は残ってないからね。もしもきみのお父さんが生きていたら、涙のことも相談できたかもしれないが、彼はもういない。彼はテレパシーや予知夢のような特殊な能力を持っていたから、もしかしたら涙の原因はそういったことなのかもしれない……が、確証はない。あるいは、きみの眼球が空気に反応して涙が流れた可能性もある。できるかぎり調べてみたいから、これまで涙のでた場所や状況を、可能なかぎり文章でまとめておいてくれないか」
「わかったわ。すぐに書いてみる」
オットーの指示をうけて、わたしが涙の症状についてまとめていたところ、テレビから緊急速報が流れた。テロップには『タイムマシンで立てこもり事件が発生』と書かれていた。
詳しく確認したところ、タイムマシンに乗ることのできない者たちが、機体を乗っ取ったとのことだった。
「まずいわね。とりあえず本部に向かわないと」
ユリがつぶやいた。オットーも賛同した。
「ああ、そうした方がいいね。早く行くべきだ」
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