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とはいえ彼自身もちょっと戸惑っているように見える。
「本当に親しいうちにも入らない、顔見知りというう程度さ。知り合いの知り合いと言っていい」
「その、昔付き合ってたやつの知り合いってこと?」
ビシッと尋ねると、彼はデカい図体をよろめかせてうろたえた。
「おいおいハニー、その話はよしてくれ、もう過去の話さ! 全く、昔の知り合いっていうのはそういう余計な置き土産をしていく」
「別にいいよ。お前がモテるって話はシェフからも聞いてたし、付き合ってたやつなんかいくらでもいるだろうよ」
ましてこういう集いともなれば、参加人数が多いとしてもコミュニティは狭く濃いものになるだろうし。彼と親しい人間、彼の過去を知る人間が多くいる可能性だって否定できない。
ここに来るまでにそこまで頭が回っていたら、ここに来ようとは思わなかったかもしれない。
(ちょっと失敗したな)
今更後悔しても遅い。乗ってしまったクルーザーはすでにゆっくりと海上を進んでいる。
「お前を不愉快にさせるためにここに来たんじゃないんだ、今話した彼にはもう会うことはないだろうから安心してくれ。無視すればいいんだから」
オロオロしながらそっと肩を抱いてくる。
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