君とてのひら

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少し歩くとメイン会場に着いた。先に宿に入るのかと思ったら、防犯上の理由で下船と同時にメイン会場でのイベントへのチェックインが必須なのだそうだ。本人確認を済ませ、それと引き換えにフェスタ参加者を示すリストバンドを装着すれば、あとは島の中を自由に散策していいらしい。場所さえ弁えれば朝から晩まで全裸でいることも可能とか言っていた。そんな馬鹿な話があるか。 「ヌーディストビーチさ。行ったことないか?」 「ねーよ! そんなところ行って何すんだっつうの」 そういうのは、温泉や風呂に入るという文化がない国で盛んに行われているという話を聞いたことがある。 「じゃあ行けたら行ってみよう。な?」 「えー、だって素っ裸で外にいるんだろ、変態みたいじゃん」 「芸術さ、気にする必要はない。みんな全裸なんだから、却って服を着ている方が恥ずかしい」 「そりゃそうだろうけどよ」 とりあえず保留!といって話を切った。 歩きながらリーフレットを確認すると、島、ようするに会場の入り口というのが一か所。シャトルバスの昇降場所もそばにあるらしい。現在位置がここというわけだ。 「先にホテルにチェックインするだろ?」 当たり前にみたいに聞くが、彼は軽く首を横にふった。
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