君とてのひら

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「髪も洗いやすいし最高」 本当にちょっと切っただけなのに、ずいぶん洗いやすく感じるから不思議だ。 「洗いやすさだけだったら、俺の髪型が一番さ。まぁお前にはオススメしないがな」 「だろうな」 天下のスキンヘッド様には敵わない。思えば人生で一度も、スキンヘッドどころか坊主にすらしたことがない。やりたいと思ったことすらないけど。 髪を切ったのは昨日なのに、髪の細かいのがまだ体にまとわりついているような気がして、仕事から帰ってすぐに風呂に入った。彼もその後に続いて、結局一緒にひとっ風呂浴びて、適当なTシャツと短パンを身に纏う。 「さ、夕食だな」 そうそう、飯はこれから。時刻は午後7時をまわったところで、いつもより数時間早いバスタイムを終えた。 ダイニングテーブルには食事とワインが並ぶ。自宅でも常にフルコースみたいな状態の食事にももう慣れたものだった。 ガラステーブルを挟んで向き合い、ワイングラスを軽く重ねて食前酒を楽しむ。いつもの優雅な食事の始まりだ。 「ところでさ、お前が言ってたアレ、本当に俺も行ったほうがいいのか?」 そんな食事の途中で、ふと思い出して尋ねた。ナイフとフォークをもち、いざに肉に手を伸ばした彼の動きが止まった。
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