君とてのひら

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駄々っ子みたいに声を裏返して訴えてくる。親とはぐれた子供かな、どっちでもいいけど甘えん坊すぎるだろ。 「同じ部屋で寝るんだからいいじゃん。な?」 思えば結婚してから、もとい一緒に暮らし始めてから、一度も彼の別のベッドで寝たことがなかった。それまで一人寝が当たり前だったのに、窮屈にも思わず床を一緒にしているんだから不思議なもんだ。 だからたまには一人で寝たっていいよな。 不満そうにしているのをあえてスルーして、ロフトに上った。ダブルサイズが2つ並んでいる。さすがに俺ら二人で寝るのは狭い。ベッドの足元には大きな引き戸の窓があって、ベランダに続いていた。 「お、すげえじゃん、ほら」 ベランダの明るさに誘われるがまま外に出た。備え付けの外ばきに履き替えると、まっすぐ向こう側にフェスタのメイン会場がよく見える。島の全景とまでは言わないけど、向こう側の海まで広く眺めることができた。 「おー、何やってるかくらいは見えんじゃん」 「おお、素晴らしい眺めだな! 最高のコテージだ」 すぐ隣が森で、隣のコテージも見えないくらい奥まっている。だからこんなに眺めがいいとは思いもしなかった。 「二人きりを満喫できそうだ」 そして彼がニンマリと笑う。
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