君とてのひら

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「ああ、フェスタのことか?」 「そうそうそれ。だってゲイ限定なんだろ、俺ゲイじゃないし」 男と結婚しておいて何言ってんだろうと思う。彼も同じことを思っていたようで、俺の妻なんだから 大丈夫さなんて言って笑っている。 「まあ強制するものでもないからな。もし良ければという具合だが、せっかく日本での開催だからどうかと思ったんだ」 「んー、まぁ……」 そのフェスタというものの存在を知ったのは、彼と結婚してからのことだった。世界中のゲイが集うカルチャーの祭典なのだそうだ。あれこれと熱っぽく説明してくれたが、ようするに超大掛かりな男子校の文化祭みたいなものらしい。同性同士で結婚できるようにはなったものの、それまで築かれていたマイノリティのコミュニティや文化まではあまりオープンにならなくて、ずっとノンケだった俺はそういうフェスタというものを知らずにいた。 「70年という伝統のあるイベントなんだ。4年に一度様々な国で行われているから、次に日本で行われるのはいつになるかわからない。見てみて損はないぞ」 「損はないだろうけど、野郎ばっかりってすげぇ濃いよな……」 別にそこで男女差別をするつもりはないけど、やっぱ花がないよなって感じ。
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