君とてのひら

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「なかなかの景色だぜ、俺以上の筋肉が勢ぞろいさ」 「うわぁ……」 彼は花でも撒いたように楽しそうにしながら、テーブルの隅に置いていたスマホを手に取った。 「行儀悪い」 軽く嗜めるが、まぁまぁと流された。 「ほら、これは前回行ったときのフェスタの様子だ。8年前だな」 そしてスマホをこちらに向けてくる。嗜めたものの差し出されるとつい覗き込んでしまった。 めっちゃ笑顔で、同じくらいゴリゴリの半裸のマッチョと写真に写る夫。次々に写真を見せられた。どれも笑顔の男しか写っていないが、中にはとんでもなくスタイルのいい女性らしい影も見える。 「女いるじゃん」 「女性じゃないぜ、ドラァグクイーンさ、すごいだろう」 「え、女じゃねぇんだ」 写真から溢れかえる人、人、人。原色ばかりのパレード、サーカスみたいな仮装、多様な人種、とにかく幅広い年齢層。平たく言ったら文化祭なんて言ってみたものの、見た感じ文化祭というか大型テーマパークのように感じる。 「楽しいんだ、音楽フェスのような側面もあるし、クラブのようでもあり、美術館のような趣もある」 「んー、見てる限り派手だし、いろいろありそうだよな」 「全部で3日開催されるんだが、すべてのコンテンツを見切るのは至難の技さ」
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