君とてのひら

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「んー」 すげぇむさ苦しそうだけど、一回くらい見にくのはいいかもしれない。そこでしか会えない友人知人もいるそうで、そこに俺も一緒に行ってくれるなら、どれだけテンションが上がることか!というようなことも言っていた。 「ちなみに、あいつもくる」 「あいつ?」 「俺たちのおかかえシェフさ」 「シェフ……ああシェフ!」 爽やかな笑顔がすぐ頭に浮かぶ。 「わざわざ日本に来んの?」 「ああ、あいつは毎回参加しているんだ。それこそ、そのときだけはドラァグクイーンをやっている」 「へぇ」 「コンテストがあるんだ、ドラァグクイーンの。あいつは毎回入賞している。そこでパートナーと出会ったんだ」 「首相と?」 二人の馴れ初めなんて考えたこともなかったけど、出会いの場でもあるわけか。 「ま、シェフがいるなら行ってもいいかな」 なんとなく前向きになる。彼の表情がパッと明るくなった。 「ならぜひ行こう! あの景色を見せてやりたいんだ」 「いや、景色はなんかすごそうだからいいんだけど」 一応ノンケの自負があるし、男の裸や筋肉にこれっぽっちの興味もない。 「よし、じゃあ決まりだ、行こう」 ただ、彼が本当に楽しそうにしているから、それはそれでいいか、と思ったのだった。
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