君とてのひら

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開催日は、開催国の7月の最終金土日曜日と決まっているという。 「その日はしっかり休みを取ったぜ!」 シフトに目を通しながら、彼は笑顔で言った。もちろん俺も休み。重役なんだからシフトなんかなんとでもなるだろうに、仕事が趣味の彼はそこら辺もきっちりとしていた。 「宿の手配もいいし、交通手段もいい。完璧だ!」 場所はここから飛行機と船を乗り継いで5時間の、南にある小さな島だという。南というか、正確には東らしいけど。 「小さな町のキャンプ地らしいな。もちろん貸切だ。大きなイベントで相当の金が落ちるから両手をあげてOKがでたと聞いた。オフレコだがな」 「小さい町ならそうだろうな」 世界的なイベント、しかも貸し切りとなれば、多少いかがわしくとも文句もあるまい。 「つうか国内旅行とかめっちゃ久しぶりな気がする」 よくよく考えてみると、新婚旅行以来じゃねえか? 「海外ばかり行っていたからな。まぁ今回もちょっと海外のような部分があるから、国内旅行と言えないかもしれないが」 「まぁな、世界各国から人が集まってくればな」 それでも日本のどこかというだけで、ちょっとホッとした部分もあった。贅沢な話だが、海外旅行にも疲れていた。
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