君とてのひら

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国内だから前乗りすることもなく初日を迎えた。朝一番の飛行機で地元の空港に降り立つ。そこからハイヤーとクルーザーで現地まで向かうことになっている。見慣れた電信柱やなだらかな山、日本語の道路標識を見ると、ちょっと不思議な気分になった。 片田舎の小さな町に、ちらほらと外国人の姿が見える。みんな男だし、雰囲気で同じ場所に行くんだろうというのがなんとなくわかる。 「ゴツい野郎ばっかり……」 夫と同じくらいの身の丈の男も多くて、同性ながら正直ちょっと怖い。 「なぁに心配することはない、みんな良識のある連中ばかりさ。何かトラブルが起きたら、イベントどころかゲイ自体が世間からどんな目で見られるか、よく理解しているからな」 「なるほどね」 自分で自分の首を締めるような馬鹿はいないというわけか。もちろんいちいち海外に出向かないといけないイベントに好んで顔を出すのだから、経済力も国際的な常識もあるんだろうし、当たり前といえば当たり前かもしれない。 とはいえあまり気を抜かずにいようとは思う。ちょっと気を抜いたことで、何度も彼に迷惑と心配をかけているのだから。 ハイヤーが港に着く。乗り換えるクルーザーは、大型ダンプカーのような厳つさと大きさで水面に鎮座していた。
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