AM 8:00

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AM 8:00

 目を開くとすぐに覚醒した。近くに置いてある目覚ましを鳴る前に解除して、ラジオのFMをつけた。寝起きの悪い俺は一体どこへ行ったんだ? 「クリスマスイブの今夜は全国的に雪になるところが多いでしょう――」  しばらく布団の中で微睡む。シーツに顔を埋めて三浦さんの香りを探す。まあ見つかるはずはないのだが。  俺は思い切って布団から這い出ると大きく一つ伸びをした。 「まだ8時かよ」  約束の時間までまだ9時間もある。俺は浮き足立つ気持ちを抑えて気合いを入れた。  コーヒーのスイッチを入れて、食べられそうなものを探す。残り一枚だった食パンをくわえたまま冷蔵庫を覗いた。三浦さんにもらった買い物リストと見比べながら必要なものをチェックする。  三浦さんは仕事があるから買い物にはいけないと申し訳なさそうにしていた。本当は一緒に行きたいんだけど、としゅんとする三浦さんを思い出して口元が弛む。 「やるかー」  つけっ放しにしたラジオからはクリスマスソングがなりやまない。食パンをコーヒーで流し込んで掃除を始める。リビングのあとはベッドルーム。なんとなく念入りに掃除機をかけていると勢い余ってぶつかったせいで丁寧に包装された包みが落ちる。寸前でキャッチしたけれど慌てて受けとめたせいで少し折れ目がついてしまった。 「あぶねえ」  店員まで巻き込んで悩みに悩んでようやく選んだそれ。三浦さんのことだからめちゃくちゃ喜んでくれるだろうけれど、きっと気に入らなくても喜んでくれるだろうから油断はできない。どうせなら気に入った上で喜んでほしい。 「まだ30分しか経ってねえ……」  時間の経つのが遅い。早く、早く会いたくて仕方ない。 「どんな乙女だ」  少し落ち着こうとわざと声を出してつっこむがあまり役には立たない。焼け石に水だ。  あとは買い物に行って、5時前には駅で待つ。確か12分に着くやつだから4時半には部屋を出よう。駅までは5分で着くけど。どうせ落ち着かねえし。ああ早く会いたい。 「今日一番ラッキーなのは水瓶座のあなた。黄色のカーディガンでラブ運急上昇」  タンスからさっそく黄色のカーディガンを出している俺はバカなのか?バカで結構、下はコーデュロイのパンツにしてカーディガンの下はなんにするか。三浦さんがかっこいいと言ってくれるから服には気を遣う。その点、最近変えた眼鏡はどんな服にも合う。特に原色に合わせやすいから今日のカーディガンとも相性は抜群。なんといってもこの眼鏡、三浦さんが選んでくれたから。  鏡を見ながらにやにやする。と、 「まだ」  鏡に映った時計は。 「9時にもなってねー!」  結局待ちきれない俺が、早く会いたいなんてメールを送ったあげく三浦さんを迎えに駅に行くのは、電車の到着する約一時間前のことだ。
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