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その後・電車を降りた二人
駅構内の隅にある、忘れられたようなベンチに座ったまま遠くに朝の喧騒を見ている。
外堀を埋めてからと思っていたのが勢いでしてしまった告白にOKをもらった俺はまだ醒めることができないでいた。
「えっと国分くん」
「すみません、時間ですよね」
上目遣いに俺を見上げてくる三浦さんに、いろんなものが爆発しそうな俺は意識的に腕時計に目を落とした。
学生の俺は遅刻しようがどうでもいいが、三浦さんは社会人。遅刻させるわけにはいかない。名残惜しいが俺は立ち上がる。と、ぎゅっとTシャツが引っ張られる。
「ま、待って」
ほんのりと頬を赤らめる三浦さんはもはや兵器だ。俺を爆破させるカンジの。
「国分くんと離れるのが、えっと、勿体ないというか」
「はい」
「離れたくないというか」
何言ってるんだろう、と呟く三浦さんがかわいい。なんかもう俺、末期だな。
「三浦さん」
「あ、ごめんね。学校行かなくちゃいけないよね」
俺のTシャツの裾を掴んでいた手が離れようとしたから捕まえる。
「情けないですけど俺は全然余裕ないです」
「僕の方こそ」
「明日も明後日も会いたいです」
ここが駅構内?それがどうした。
「今週の土曜日は空いてますか?デートのお誘いですけど」
だって三浦さんがこんな笑顔をくれるんだから。
「僕も言おうと思ってたところ」
思わず抱き締めてしまったのは、許して欲しいって話だ。
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