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エピローグ
頭上には、満天の星空。
春休み、悠馬を誘って天体観測のバスツアーに参加した。今日は近くのロッジにお泊りだ。外泊って……緊張する。
家族連れやカップルの多い中、男二人組はちょっと目立ったけど、まあいいや。
悠馬がなるべく人のいない方へとオレを誘う。やらしいこと考えてる? いや、オレもちょっとは考えちゃうけど。
小高い丘を登って、平らな地面に自前の天体望遠鏡を設置してのぞきこむ。
季節がすっかり変わって、春の星座だ。
「あ、北斗七星分かった」
肉眼で星を探していた悠馬が空を指さした。
「お」
「そっから、いくつ数えんの? あれが北極星?」
「そうそう」
自分で見つけたのが嬉しかったのか、悠馬が子供みたいに笑いかけてくる。
「望遠鏡の方が綺麗に見える」
「どれどれ」
悠馬の頬がオレの頬にくっつく。まだこの距離感は慣れない。心臓が跳ねる。
ドキドキをごまかすように、オレは思いついたことを口にした。
「……オレ、誕生日来たら免許取りに行こうかな」
「え。啓太、運転すんの?」
「何だよその目は。……父さんとよく行ってた高原、行ってみたいんだ」
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