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『お父さんはお星様になっちゃったんだよね。でも今もずっとずうーっと、菜摘と啓太のこと見守ってくれてるんだよ』
『お母さんのことは?』
姉ちゃんが心配そうに顔を上げる。
『もちろん、見てくれてるよ。だからお母さん頑張らなくちゃ。お父さんに恥ずかしくないように』
泣きすぎて真っ赤に腫れた目をまた擦って、母さんがムリヤリ笑った。それを見て、姉ちゃんの瞳がまた涙で潤んだ。
これ以上、二人を泣かせたくない。だから、オレが強くならなきゃ。オレが二人を守るから。大丈夫だから。お父さん、空の上からちゃんと見ててね。
父さんが突然の事故で亡くなってもう12年。あれから、あの高原には行けてない。
街の中ではあんな降って来るような星空を見ることはできない。けど、ひとつだけそれを味わうことができる場所がある。
だから、オレはプラネタリウムが大好きだ。
人工だけど、あのときと同じ満天の星空。
恥ずかしいけど、父さんに会える気がして、何度も通った。そのことを知ってるのは、幼馴染の工藤悠馬だけだ。
一歳の時に悠馬が隣の家に引っ越して来て、保育園から始まり小中高とずっと一緒に過ごしてきた。
小四のときに悠馬がミニバス始めて、すぐオレもってクラブに入った。悠馬はオレより色んなこと知ってるし、頭もよかった。
今の高校に入るのだって、悠馬に勉強見てもらわなかったら、入れてなかったかも。地区の中でもバスケの強豪校。悠馬と一緒にバスケやりたい一心でがんばった。
小さい頃からずっと一緒。もうそれが当たり前で、その関係が変わることなんて、考えもしなかった。
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