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 体育館の高い天井に響く声。  シューズが床を擦る音。  ボールが跳ねてゴールに当たる音。  目を閉じて、しばしそれらの音に耳を澄ます。  ――オレはこの空間が大好きだ。 「――啓太」  悠馬がぽん、と肩をたたいてくる。目を開ける。 「次、俺らの番」 「うん」  悠馬(はるま)、同級生の佐竹(さたけ)と共にコートへと駆け出す。  3対3で10分間。ボールを落としたらペナルティで腕立て伏せだ。 「っかれっしたー!」  挨拶を終え、喉を潤すべく水筒を逆さにすると、すでに空だった。ので、隣で汗を拭いている悠馬の手から水筒をもぎ取る。 「おいっ」 「いーじゃんちょっとぐらい」  悠馬の水筒に口をつけて中身を呷る。悠馬は思いっきり顔をしかめて、 「返せ」  とオレからそれを奪い取った。
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