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 ウィンターカップの予選もあっという間に終わり、秋の気配を色濃く感じるようになってきた。三年の先輩たちの悔し涙を見て、来年はもっと上まで行きたいと強く思う。  自転車置き場まで二人並んで歩くと、後ろから夕陽がついてくる。 「啓太、夕食当番?」 「ううん、今日は姉ちゃん」 「ちょっと食って帰る?」 「うん」  家でご飯が待っているが正直家まで持たない。    いつものファストフード店で自転車を停める。  入口で女子高生二人組とかち合う形になって、悠馬が先にどうぞ、とにっこりする。  そういうところ、悠馬すげえなと思ってしまう。オレだったら緊張してできないし。話しかけたりもできないだろうし。……女の子の扱いに慣れてるよな。  順番を譲られた彼女たちがこっちをチラチラ見ながら話してる。  悠馬はどっちかというとイケメンの部類に入るんだと思う。切れ長の瞳に形のいい鼻。一見クールだけど、話し出すと優しい顔になる。いつも穏やかで、冷静沈着。試合の時もオレが熱くなるのをクールダウンしてくれる。  悠馬は何事もなかったかのように注文し、お前は? って訊いてきた。 「あ、えーと、同じもので」
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