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プロローグ
――思い出すのは、いつも満天の星空。
『ほら、啓太。星が降ってくるみたいだろ』
『うん! すごいね、お父さん!』
都会では地上が明るすぎて決して見えない星々の光。圧倒的なその数。
『あの明るいのが一等星。名前はこと座のベガ。七夕の織姫だよ。天の川がうっすら見えるだろ? あっちに見えるのがわし座のアルタイル。彦星だよ』
青白く輝く星を指さし、父さんが星の名前を教えてくれる。
星の見える高原へ二人でよく行った。姉ちゃんと母さんは『寒いから』とか『暑いから』ってあんまりつきあってくれなかったけど。
オレは、父さんと星空を眺めるのが大好きだった。
草むらに二人で寝転んで、壮大な景色に包まれる。ずっと見ていると吸い込まれそうで。かと言って怖さは微塵もなくて。
父さんが話してくれる星座にまつわる神話や星の名前の由来を聞くのがすごく楽しかった。
――父さんとの突然の別れ。残されたのは一緒に星空を眺めた、天体望遠鏡だけだった。
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