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「コンビニ、行く?」
ほとんど隣を歩く背中に声をかける。一瞬動きをためた高崎は、少し離れたマンホールまで跳んでから振り返った。
「行こー」
声が笑う。すぐ前にある街灯で逆光になった顔は、それでも笑顔なのだと分かった。
大通りを折れてしばらく歩くと、ようやく進出してきたコンビニがぽつねんと光っている。駐車場が大きく取られたその空間は明るいのに、遠い隣の民家との明暗がはっきりとして、僕にはぽっかり口を開けたブラックホールに見える。
便利でも普段の夜に寄ろうと思わないのは、そんな子どもじみた怖さを感じているからだ。
ただ高崎といる時は大丈夫だと思える。僕の中で怖さが劣勢になるのだ。感情の優先順位が下がるといえばいいのだろうか。行こうと提案した時には、それを覚えていないという方が近い。けれど目の前にしても、大丈夫だと思えるから不思議だ。
「何食べる?」
「何でも」
「それ考えてないやつだ」
笑った高崎に続いて、歩道と敷地を仕切る側溝を超えた。
入口近くのスペースには、アーチ状の車止めのポールが並んでいる。そのうちの二つ、オレンジに半分腰かけるようにして、近くの高校の制服が並んでいた。軽やかな声が弾けて、低くかすれた声が後を追う。こちらを気にも止めない二人は楽しそうで、まさに二人だけの世界といった風だった。
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