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開いた自動ドアから涼しさが漏れ出て、唐突に降ってくる光に思わず目をすがめる。
「肉まん、二十円引きだって」
「じゃあそれ」
通路に入る間もなくレジに直行して、バイトらしきお姉さんに目当てを告げた。紙に包まれた熱々をそのままもらって、二人でコンビニを出る。
一、二分の買い物のあいだに制服は消えていて、僕たちはなんとなく、それより入口から遠い隅っこのポールに腰を下ろした。
「熱い?」
「だろうね」
高崎は大きく開けた口を一旦閉じて、肉まんを半分に割った。ふわりと湯気がたってすぐに消える。猫舌なのだ。
それを横目に一口食べると具材にたどり着いた。息をついたのは、息を吹きかけてからほおばった高崎と同じタイミング。
「――おいしい」
「うん」
がっつく勢いがないのは実際、高崎も僕もそれほどまでには空腹でないからだ。別に行く先はコンビニでなくともよかった。
ぶぶ、とスマートフォンが振動する。通知画面を見ると、兄からのメッセージだった。
「――誰?」
「兄貴」
ただ、帰るまでの時間を引き延ばしたかっただけ。ちょっとした寄り道だ。
高崎は相槌に代えてうなずいて、わずかに空を仰いだ。続きを口にするかは僕にゆだねられてている。話すのも黙るのも自由だ。
もう一口、肉まんを食べると少し熱さが和らいでいた。噛んで、飲み込んで、そのあいだ、高崎は何も言わなかった。もう一度スマホを見ると角度に反応した画面がついて、またメッセージが表示された。
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