ストーカーをコンビニで待ち伏せしていた私は、彼からとんでもないことを聞かされた

1/1
前へ
/1ページ
次へ
まただ……。 背後から誰かがついてくる。 仕事からの帰宅途中、駅から家につく間に背後から私を追う足音がするのだ。 最初は全く気にしていなかったのだけれど、1ヶ月も続けばさすがにストーカーを疑ってしまう。 ただついてくるだけで何もされないのだけれど、駅から家までずっとついてこられるのは不気味で仕方ない。 だけど本当にストーカーをされているという確証はない。 たまたま帰り道が同じなのかも……。 試しにコンビニによってやり過ごしてみることにした。 雑誌を読むふりをして横目で入口を盗み見ると、私の後から入ってきたのは綺麗な顔立ちの男性だった。 きっと彼はストーカーではないだろう。 こんなイケメンが地味で平凡な私に執着するはずがないのだから。 ストーカーに怪しまれないように、その後何度か日にちをあけてコンビニで待ち伏せしてみた。 だがいつも私のあとから入ってくるのは例の綺麗な彼だった。 たまたまいつも決まった時間に毎日コンビニを訪れるのだろうか。 そう思って駅で時間を潰し、コンビニに立ち寄るがやはり後から彼が入ってくる。 最初ストーカーに対して怖いという感情を持っていたが、相手がイケメンだとわかって興味が湧いた。 コンビニを出て物陰で待ち伏せする。 「なんで私をつけるの?」 待ち伏せをされているとは思っていなかったのか、彼は驚いていた。 「ちゃんと答えてよ! いわないとストーカーとして警察に通報するから!」 「見えたんだ……」 彼は何かを躊躇うように視線を下に向けたが、意を決したように口を開く。 「僕、昔から霊感が強くて、たまに見えるんだよ」 「見えるって……?」 「君の後をついて歩く男の幽霊だよ」 全身から血の気が引くのを感じた。 私は幽霊といった類の話は子供の頃から苦手なのだ。 話に聞いても迷信だと信じないようにしていたけれど、実際自分が当事者になると恐ろしくてたまらない。 後日、彼が勧める有名な神社に、彼と共にお祓いをしてもらいに行った。 お陰で駅からついてくる男の足音はぱったりなくなった。 彼とは今も交流が続いている。 地味で平凡な私にも親切にしてくれる彼は、見た目だけでなく中身もかっこいい。 だから、いつの間にか私は彼のことが好きになっていた。 釣り合わないとわかっているけれど、いつか私のことを好きになって欲しいな。 ♢♢♢ 危なかった。 ストーカーをしていたことがバレたときは焦ったけれど、適当な嘘をついて信じてくれた彼女は純粋で可愛い。 たまたま電車の中で一目惚れしたけれど、なかなか声をかける勇気がなくてつい家までつけてしまっていた。 悪いことをしているという自覚はあったけれど、結果的に彼女と距離をつめることに成功したので後悔はしていない。 僕が男なのに内気で人見知りだと知ったら彼女はどう思うだろうか。 もし僕のことを嫌いになったら、そのときは諦めてそっと遠くからついて見守ろう。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加