本能の決断

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彼の顔には殴られたような跡があり、口の横が少し切れて血が出ている 顔を上げてからも目をつぶって寝ているのか、体が斜めになっていて動かない なんでこんな所に座ってるのか? どうしてこんなに怪我してるのか? 気になってしかたがない 足を止めてからずっと彼を見ながら、関わってもいいものか自分と葛藤している 未唯奈「あっ…あの~」 恐る恐る声をかけてみる 私の声で彼が目を開けると、ガッツリ目が合う 颯太「…」 いきなり話しかけられて状況がわかっていないらしい 未唯奈「あの…大丈夫ですか?」 バッグからハンカチを取り出し、彼に渡そうと目の前に出した 颯太「えっ?」 すぐには受け取ってもらえず、目を合わせたまま少しの沈黙 未唯奈「口のところ、血が出てるから…使ってください」 膝の上にハンカチを置くと、彼が手に取った 颯太「ありがとう」 口にハンカチを押しあてると、痛かったのか少しビクッとしていた こんなこと、いつもの私ならしない 酔ってるのもあるし、この人と半ば強引にきっかけを作ろうとしていたのかもしれない このまま黙って帰るのがもったいないと思っているのだ
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