第一章 その想い、お届けします。

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   彼は、泣きながら事の詳細を語りだした。 「俺の父は政治家で、息子である俺に対してお見合いの相手を用意していたんだ……」 そのまま彼は続ける。 「俺はそれに反発していた……でもそれは……」 「仏の顔も三度まで。っていう言葉があるくらいだ」 僕は、話の先を察した。 「三度、親父に反発していた俺には、後がなかった……」 「だから、あのバレンタインの日、チョコレートを受け取れなかった……」  前日、ヒロエの部屋にて 「あのバレンタインの日以来、私は彼のことを忘れようと想った。」 「でも……」 「忘れられなかった。」 「だから、僕、ユーバーイーツ配達人にチョコレート一つを注文した。」 ヒロエさんは頷き、また涙を拭った。 その時、僕は決意した。一人のしがないユーバーイーツ配達人として。 「ヒロエさんのその想い、お届けします。」
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