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いきなりの告白と、どうやら何かを勘違いしている様子に自分たちがこうなる前の会話を思い出してみた。
そういえば、BL本が中川のものだと言ったときに不愉快そうに何か言っていた気がする。
「コタ、なんか勘違いしてないか?」
侑人の言葉に狐太郎は涙を拭うと首を傾げた。
「中川さんとは、その……そーゆー関係じゃないぞ」
言葉の意味がよくわからなかったらしく、狐太郎はきょとんとした顔をしている。
あまり言葉にするのは恥ずかしいが、ちゃんと言葉にしなくては今の狐太郎には伝わらないだろう。
「中川さんとはただの仕事仲間なだけで、その……恋愛対象?じゃないってことだ!」
頭を少し掻き、あまり言いなれない単語を言葉にすると自分でも照れる。
そんな侑人の言葉に今度は狐太郎が顔を青くした。
「おじさんの馬鹿!こういうタイミングで言うつもりじゃなかったのにっ!!」
小さいころから秘めてきた思いを勘違いで、しかもこんな強姦まがいな形でカミングアウトすることになったのがよほどショックだったのだろう。
再び泣き出した狐太郎を宥めながら、子どもらしいところは可愛いなと少し思った。
とはいえ、侑人だって狐太郎が恋愛対象かと言われれば、違う上に年齢差や男同士という問題もある。
「コタの気持ちはわかった。お前が大人になるまで気持ちが変わらず、俺にも相手がいなかったら考えてやる。」
親愛と恋愛感情がごっちゃになっているに違いない。
年月が経てば気持ちも変わるだろうと侑人は思い、ポンと狐太郎の背中を叩いた。
だが、幼い時から秘めていた思いは侑人が思っているよりも簡単なものではない。
「なら、おじさんに相手が出来ないようにより一層見張ってやるから。」
狐太郎は何か文句ありげに見ていたが、自分がやったことに多少の後ろめたさがあったこともあり、侑人に聞こえないぐらいの声でぽそりとそう呟いた。
ピンチを乗り切ったつもりでいる侑人であるが、本当の災難の始まりであることにまだ気付くことはなかった。
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