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油断をしていたところもあったとはいえ、思った以上に強い力に驚き侑人はそのまま狐太郎に組み敷かれてしまった。
相手が狐太郎だった故か、まるで他人事のように『そういえば、さっきこんなシーンあったような?』など、ぼんやりと考えてた。
相手が女の子じゃなくて良かったのではないかと、呑気なことを考えながらぐっと狐太郎の身体を押しどかそうとした。
「狐太郎、冗談は……」
「おじさんっ!俺、本気だよ。」
叱るつもりだった侑人だが、逆に狐太郎の真剣なまなざしに圧倒されてしまった。
しかもこの状況で少し顔を赤らめ、視線をそらさずに間合いを詰められる。
―――あ、マンガだと襲われるところだ。
侑人がそう思ったのと同時に唇に温かい何かが触れ、ぬるりとしたものが口の中に入っていくのを感じた。
一瞬何をされているのか理解ができなかった侑人だが、狐太郎にキスをされたことに気づき慌てて身をよじり逃げようとするが、思うように動けない。
経験のないであろう狐太郎の舌がおずおずと、侑人の舌を捕えようと弄る。
「…ふ……まっ!……コタ……やめっ」
背中をたたき、抗議の声を侑人が上げるとようやく解放された。
マンガに影響されたのかは知らないが、同意を得ずに無理やり致そうとするとは……相手が男で大人の侑人だからまだしも女の子であったら犯罪である。
大人として注意をしなければと、狐太郎を方を見れば大粒を涙をポロポロ流して泣いているではないか。
泣きたいのは、いきなり押し倒され男にキスされた侑人のはずだが、片思い中の母親そっくりな息子に泣かれれば怒りもどこへやら何も言い返すことが出来なかった。
「あの頃からずっと侑人おじさんが好きだ。あのおっさんなんかに取られたくないっ!」
―――今、狐太郎のやつ何て!?
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