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とくに中学に上がってからは今回のように逃げ場に使われている。
やれやれと侑人は肩をすくめた。
「コタ、両親と喧嘩でもしたか?」
「だから狐太郎だって。」
「だって、狐というか狸っぽいからさ。」
母親の結子ものように丸顔で愛嬌のある可愛らしい女性だ。
しかも狐太郎のことは小さいころから侑人も知っていて、ずっと『コタ』と呼んでる。
だが、名前のことは本人が一番気にしている様子だ。
侑人もそれ以上は、弄ることをやめ「狐太郎」と大人の顔で声をかけた。
「あまり親を心配させるもんじゃねえぞ。」
「……家のことはおじさんには関係ないだろ。」
内ではなく、外の人と言われたも同然。
関係ないと言い切られてしまえば、それ以上は何も言えない。
安心させるために結子に家で預かることだけ連絡しておくかと、侑人はスマホに文字を打ち込む。
返信を送ったのを確認し、視線を上げると自分の寝室の扉が開いていることに気づいた。
―――しまった!あの本片づけてねえ!
慌てて部屋に入ると狐太郎がベッドの上にあったBLマンガを読んでいるではないか。
「おじさん、これ……」
狐太郎が侑人に見せつけてきたのは大人の先生が年下の学生に組み敷かれているシーンだ。
よりによって、未成年の狐太郎にこんなものを読まれていることを知られたのは正直キツイ……しかもピンポイントで歳の差カップル物である。
「おじさん、俺の事そんな目で見ていたの?キモイ」と思われてもおかしくない。
それになにより結子に知られるのはもっとマズイ!!
結子は侑人にとって親友であり、それに何より……
―――今も片思い中の大事な人なのだ。
本当のことを話せばいいのだろうが、仕事のために読んでいたなんて言えば今度はBLボイスドラマに出演することがバレてしまう。
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