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♢
(あれ……?)
泣き疲れていたのか、眠っていたらしい。
地面に横たわっていた体を起こした拍子に、マントがするりと剥がれていった。
これは……キリクのマントだ。
寝ぼけた目を擦り、今の状況を理解しようとした。
辺りは濃紺の闇が広がり、空には銀河が溢れている。
もう夜なんだ。
え、もう夜!?
一体どれくらい眠っていたのだろうか。
それにここはどこなんだろう。
「どこかで見た場所なんだけどな」
巨大な岩柱が地面からいくつも突き出している。
どこだったか。
寝起きはどうもぼーっとしてしまう。
「目が覚めたか」
キリクが飲み物の入ったコップを渡してくれた。
湯気から良い匂いがしている。
暗くて中身が見えないが、匂いからコーンスープだと分かった。
「ねぇ……ここって」
「あぁ、ライラックの村の近くだ」
「城から出たときは朝。で、今は夜。もしかして、1日でここまで来たの?」
「そうだが?」
さも当たり前に言ってくれる。
普通、王都からライラックまで行くのに1ヶ月以上はかかるのだ。
「少し必要な物があってな。デフォーを訪ねていた」
「え! デフォー爺さんに会ったの?」
「ああ。それももう済んだ。……だが、かなり飛ばしたからな。流石に俺も疲れた。人間のお前と一緒にいると村には入れないからな。今日はここで休もう」
「う、うん」
そうだった。
あれから色んなことが起きて忘れていたが、ドワーフの掟として、人間の私があの村に入ることは出来ない。
それはデフォー爺さんからはっきりと言われたことだ。
野宿……野宿かぁ。
地面に小石が転がっていてお尻が痛いけど、城での監禁生活よりは随分マシに思えた。
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