18.譲れない想い

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♢ (あれ……?) 泣き疲れていたのか、眠っていたらしい。 地面に横たわっていた体を起こした拍子に、マントがするりと剥がれていった。 これは……キリクのマントだ。 寝ぼけた目を擦り、今の状況を理解しようとした。 辺りは濃紺の闇が広がり、空には銀河が溢れている。 もう夜なんだ。 え、もう夜!?  一体どれくらい眠っていたのだろうか。 それにここはどこなんだろう。 「どこかで見た場所なんだけどな」 巨大な岩柱が地面からいくつも突き出している。 どこだったか。 寝起きはどうもぼーっとしてしまう。 「目が覚めたか」 キリクが飲み物の入ったコップを渡してくれた。 湯気から良い匂いがしている。 暗くて中身が見えないが、匂いからコーンスープだと分かった。 「ねぇ……ここって」 「あぁ、ライラックの村の近くだ」 「城から出たときは朝。で、今は夜。もしかして、1日でここまで来たの?」 「そうだが?」 さも当たり前に言ってくれる。 普通、王都からライラックまで行くのに1ヶ月以上はかかるのだ。 「少し必要な物があってな。デフォーを訪ねていた」 「え! デフォー爺さんに会ったの?」 「ああ。それももう済んだ。……だが、かなり飛ばしたからな。流石に俺も疲れた。人間のお前と一緒にいると村には入れないからな。今日はここで休もう」 「う、うん」 そうだった。 あれから色んなことが起きて忘れていたが、ドワーフの掟として、人間の私があの村に入ることは出来ない。 それはデフォー爺さんからはっきりと言われたことだ。 野宿……野宿かぁ。 地面に小石が転がっていてお尻が痛いけど、城での監禁生活よりは随分マシに思えた。
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