2.予感

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「やっぱりこのまま待ってるだけじゃダメだ!」 ばっとベッドから起き上がると、近くに置いてあった麻袋に部屋中のものを片っ端から入れ始めた。 本や薬草類、器具類、半分に切ったパンとチーズ。そして……。 「私の夢のための貯金……」 大きな瓶に入った沢山のお金は、クエストの報酬から差し引いて少しずつ貯めたものだ。 でも今は夢とか言ってる場合じゃない! その瓶も一緒に袋へ詰めこむと、皮のコートを羽織り、愛用している斜めがけ鞄に折りたたんだ地図を入れた。 長年暮らしているにしては荷物が少ないことに、改めて生活に余裕がないことを認識させられてしまう。 お金はなくとも必要最低限のもので生活してきた自分を褒めてやりたい。 ところで今は何時だろう。 文字盤の欠けた時計の針は11時を指している。 まだ昼のスピーチまで時間があるね。 避難準備を終えてからやることがなくなり、荷物を床に置いてベッドに横になった。 「この布団で横になれるのも最後かも……。はぁ…………私、どうなるんだろ」
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