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キリクははぁーっと溜息を吐き、首を左右に捻っている。
そりゃあ疲れるだろう。
王都からライラックまでは随分離れている。
恐らくとんでもない速度で走ってきたのだ。
しかも自分を抱えて。
「飯はそれだけしかないが、今日は我慢しろ」
「我慢なんて! スープが飲めるだけでもありがたいよ。その……ありがとう」
きっとレーモから貰ったのだろう。
私の分まで用意してくれて……レーモさん。
キリクは石だらけの地面を払い、ゴロンと横になった。
「あのエルフ、そう簡単に諦める奴じゃないと思うがな」
「え、それってどういう——」
「……もう寝る。お前も寝ておけ」
そう言うと、キリクは本当に眠ってしまった。
ライラックの周りにある岩壁には、光の魔石が散りばめられている。
それらには魔法生物が嫌がる成分が含まれているため、夜間でも魔法生物に襲われる心配もないのだ。
最も、この間のような昼間に現れる魔法生物にはこの魔石は効かないのだが。
(キリク、本当に疲れてる)
ミラは自分の体にかけられていたマントを引き寄せた。
キリクの言う通り、今はアレンを信じよう。
君主を裏切ってまで自分を助けてくれたのだ。
無策のまま突っ込んでいく程、アレンは愚かじゃない。
私より数倍も頭いいと思うし。
あんなだけど。
「アレン、無事でいてね」
マントに染みついた匂いを深く吸いこみ、夜空に浮かぶ星を暫く眺めていた。
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