42人が本棚に入れています
本棚に追加
「これはグラグリオンという魔鉱石の一種だ」
「グラグリオン!?」
「そうだ。この村を隠すのに使えるからな。爺さんから貰ってきた」
村を丸ごと隠すことが出来る魔鉱石なんてものは、当然店でも売っていないし、存在自体が珍しい。
採掘場も限られているはずだ。
そんな凄いものをデフォーが譲ってくれるとは……。
いや、というか、キリクはよくグラグリオンの存在を知っていたと思う。
グラグリオンは一部の魔鉱石マニアにしか知られていない。
ミラ自身は、偶然ジルからその鉱石の話を聞いたことがあったため、それがどれ程貴重な物かは分かっているつもりだ。
ただ、使い方までは知らない。
「ミラ、これに手を触れろ」
「なんで?」
「いいから」と、手首をぐいと引っ張られた。
骨ばった手にドキリとしてしまう。
幸いキリクには気づかれていないようだ。
「暖かい……」
グラグリオンは仄かに熱を持っていた。
「まあ見ておけ」
キリクは広場の中心にある石像下に、小さく穴を掘った。
そこにグラグリオンを放り込む。
暫く待つが、特に何も起こらない。
「……何も起こらないけど」
「これでいいんだ。このグラグリオンのお蔭で、村は隠されている。さっき魔鉱石に触れただろう? これで、魔鉱石に触れた者以外が村を認知することもできないし、触れることも出来ない。これ以上の安全な場所はないだろう」
「あっ……」
今全てを理解した。
恐らく、キリクは王都に来るまでの間、デフォーに交渉してくれたのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!