18.譲れない想い

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「これはグラグリオンという魔鉱石の一種だ」 「グラグリオン!?」 「そうだ。この村を隠すのに使えるからな。爺さんから貰ってきた」 村を丸ごと隠すことが出来る魔鉱石なんてものは、当然店でも売っていないし、存在自体が珍しい。 採掘場も限られているはずだ。 そんな凄いものをデフォーが譲ってくれるとは……。 いや、というか、キリクはよくグラグリオンの存在を知っていたと思う。 グラグリオンは一部の魔鉱石マニアにしか知られていない。 ミラ自身は、偶然ジルからその鉱石の話を聞いたことがあったため、それがどれ程貴重な物かは分かっているつもりだ。 ただ、使い方までは知らない。 「ミラ、これに手を触れろ」 「なんで?」 「いいから」と、手首をぐいと引っ張られた。 骨ばった手にドキリとしてしまう。 幸いキリクには気づかれていないようだ。 「暖かい……」 グラグリオンは仄かに熱を持っていた。 「まあ見ておけ」 キリクは広場の中心にある石像下に、小さく穴を掘った。 そこにグラグリオンを放り込む。 暫く待つが、特に何も起こらない。 「……何も起こらないけど」 「これでいいんだ。このグラグリオンのお蔭で、村は隠されている。さっき魔鉱石に触れただろう? これで、魔鉱石に触れた者以外が村を認知することもできないし、触れることも出来ない。これ以上の安全な場所はないだろう」 「あっ……」 今全てを理解した。 恐らく、キリクは王都に来るまでの間、デフォーに交渉してくれたのだろう。
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