1.ミラ・ヨルド

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王都アステル。 大陸一人や物が集まる経済の中心地。 街には様々な店が立ち並び、活気に満ち溢れ、戦後10年が経った今ではより一層の繁栄を見せていた。 復興の際に土地の区画整理が行われたが、裏通りの所狭しに建物が立ち並ぶような外観はそのまま残っている。 街の中央へ向かうと、真新しく建てられた依頼所から沢山の人々がひっきりなしに出入りしている様子が伺える。 と、菫色(すみれいろ)の髪をポニーテールにした女性が店内に入っていく。 「今日も人でいっぱいだ。ヘレナさん人気者だし、これは暫く待たなきゃいけないかなー」 動きに合わせて緑玉の宝珠がはめ込まれた大きな丸いピアスが、彼女の耳元で揺れている。 軽快なステップで円形のカウンターまでやってくると、丁度依頼を受注しに来た客と受付の女性が話し終わったところだった。 「いらっしゃいミラちゃん! 今日もはりきってお仕事してくれるのかしら?」 弾けるようなウインクを送ってくるこの受付嬢こそ、この依頼所のオーナーである。 女性にしてはすッとした背丈で、千歳緑(ちとせみどり)のワンピースを身に纏っている。 大胆にも胸元が大きく開けており、前締めのコルセットで締め上げられたことで豊満なふくらみが強調され、店内男性客の注目を集めているが、本人は特に気にする様子もない。 「勿論ですヘレナさん! 元気なのが私の取り柄ですから!」 ヘレナはカウンターから茶色の綴込表紙で閉じられた分厚い本をミラに手渡した。 「ミラちゃんが毎日頑張ってくれるお蔭で、あたしも助かってるわ。今日もいつもの依頼にする?」 依頼所ではE~Aの依頼難易度によって本の色が分かれており、実力に見合った依頼を受注することが出来る。 しかし高難易度のものを受注するにはそれ相応の実力が求められるため、依頼所の試験に合格しなければならない。 ずっしりと重い本の表紙には「依頼書E」と記載されており、依頼主から寄せられた依頼書が何百枚も閉じられている。 ミラはバラバラとページを捲り、「魔力回復薬5個の納品」「解熱剤10個の調合及び納品」を指で差し示した。 「いつもの薬草採集クエストもなんですけど、今日は素材が集まったのでこのクエストも受注しようと思います」 「はーい、合計3つのクエストを受注ね」 慣れた手つきで綴じ紐をほどき、依頼書3枚をミラに渡した。 「それじゃあ、頑張ってきてね」 「はい。じゃ、行ってきまーす!」
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