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ミラに両親はいない。
母親は出産中に亡くなり、父親はミラが5歳の時に病で死んだ。
幼い子供が税を収められるはずもなく、役人に住んでいた家を取り上げられてしまったが、その際に緑玉のピアスだけは父親の形見として持ち出すことができた。
暫く道端で物乞いをして生活していたが、たまたま隣町まで買い出しに出かけていたシスターが声を掛けてくれたお蔭で、それ以降は教会で暮らすことができたのは、不幸中の幸いだったと言える。
ミラが10歳の時に戦争が始まり、大陸各地の教会には大量の戦争孤児がおしかけた。
しかし激化する戦争に暮らしも苦しくなり、奴隷商人に売り渡す所も少なくなかった。
ミラの暮らしていた教会にも奴隷商人が出入りしていたが、古参のミラは回復魔法の素質があったため、身売りは免れた。
シスターから簡単な魔法の手ほどきを受けた後、傷ついた人々を回復しては日銭を稼いでいたが、とうとうミラにもその順番が回ってきた。
しかし身柄を引き渡された子供がどうなるかを知っていたため、売り飛ばされる前に逃げようと12歳の時に深夜こっそりと教会を抜け出した。
それ以降10年間一人でやっていくために色々と苦労はしたが、今ではアパートに一人暮らしが出来るまでになり、ミラの生活は安定してきている。
作り終えた解熱剤と魔力回復薬を麻袋に入れ、ミラは作業机に放りだしてあるパンを食べた。
チーズも食べようかと思ったが、依頼を全て完了させてからの方が自分への褒美になると思いやめた。
「んー……ゆっくりしたいけど、あとは薬草採集だけだからパパっと終わらせちゃおうかな」
依頼所に何往復もするのが面倒だったため、麻袋に納品するものを全て入れた。
再びコートを羽織り向かう先は、王都アステルから少し東に行ったところにある小さな森だ。
ここには主に傷口に効く薬草が沢山生えており、薬草採集クエストには丁度良かった。
「薬草を集めても大した報酬はもらえないけど、ちょっと珍しい薬草が生えていたりするんだよね。
ついでに探して調合の材料を調達出来るんだから、一石二鳥っ!」
小型ナイフであっという間に薬草を刈り取ると、ミラは調合に使える薬草や植物を探し始めた。
今日調合で使用したホタル草は少し珍しい為、こういった時に集めている。
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